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入会したら辞めたくなくなる倶楽部

企画の背景

フィットネスクラブが日本で普及するキッカケとなったのが1980年頃である。
米国のケネス・クーパー博士がエアロビクスの理論をNASAの宇宙飛行士の体力強化プログラムとして開発され、これは成人病(現在では生活習慣病)の予防に効果的であり、米国の抱える問題解決に大きく貢献したことから、10年後の日本も同じ問題が発生するとのことからいち早くこの理論が日本にも輸入され、そのプログラムを展開する拠点がフィットネスクラブであった。

当時日本には子供の心身の発達に寄与することを目的にスイミングクラブが全国に普及し、スイミングクラブ黄金時代であった。一方で成人のためのプログラムとしてウエイトトレーニングを中心とした、トレーニングセンター、そしてジャズダンス等を教えるダンス教室があった。
これらが単体で存在してはいたが、複合的に展開しているクラブはごく少数であった。
そんな時にこのエアロビクス理論と共に米国から輸入されたフィットネスクラブに飛びつき始めたのがスイミングクラブの経営者であった。水泳を教える場から健康をテーマにして成人をも集客するスタイルを創っておかなければ、子どもの水泳教室だけでは限界を予測した結果である。
その証拠に現在の業界大手のほとんどがスイミングクラブの運営会社からの参入組である。

しかし、米国と日本に決定的な違いは健康保健制度にあった。
米国の場合、病気で入院すれば多額な医療費を負担しなければいけない。しかし日本は世界一の健康保健制度によって「病気になれば医者にいけば良い」と現代医学の高度な技術を個人負担額20~30%で治療できる環境は、大きく健康教育を遅らせることになった。
その意味でフィットネス参加率は米国の10%に比較して日本は3%にすぎない。少数であった。
そんな時にこのエアロビクス理論と共に米国から輸入されたフィットネスクラブに飛びつき始めたのがスイミングクラブの経営者であった。水泳を教える場から健康をテーマにして成人をも集客するスタイルを創っておかなければ、子どもの水泳教室だけでは限界を予測した結果である。
その証拠に現在の業界大手のほとんどがスイミングクラブの運営会社からの参入組である。

退会する理由(または入会しない理由)

新しいものにとりあえずは触れてみようとする日本人に一度はフィットネスクラブに入会したという人は増えてきた。しかし、直ぐに辞めてしまう。

なぜなのか?

1

世界一の健康保健制度に甘えてしまって、健康への危機感がない。

2

スポーツや運動に対する価値観は疲れるもので厳しい訓練が必要で、自主的能動的行為ではないと思っている。
学校時代、罰としてランニングや腕立て伏せ、腹筋等のトレーニングはやらされてきた。多感な時期である小・中・高校時代のイメージ付けは大きい。
特に体育会系運動部経験者はフィットネスクラブへの入会率は低い。

3

運動の効果は3ヶ月後であり、そこまで待てない
自クラブの調査をしてみれば解ると思うが、今までの退会者の在籍月数別に人数を出せば、3ヶ月以内で来なくなった数の多いことに気づく。
1年以上の在籍者であっても利用状況を調べると、最初の3回だけで後はほとんど利用がない等。
それでは運動の効果が確認できるはずがない。

4

おもしろくない
フィットネスクラブのスタッフから言わせると、ここは遊園地ではない。
おもしろいとかおもしろくないの価値観でななく……と言いたくなるが、しかし楽しくないことにお金を掛ける人はその商品が良いと分かっていても買わないし、買っても使わない。

退会しない理由

それでは退会しない人、辞めたくなくなる理由は何なのか?
フィットネスクラブの現場にいる人は考えていただきたい。「この会員さんはなぜ?辞めないのだろう」と。
現場でアンケートを採ってみても良い。
フィットネスクラブの歴史のある米国で全米フィットネスクラブ協会なるものが調査した結果は次のようであったと10年前に報告を聞いた。
フィットネスクラブに10年以上会員として継続出来ている理由は?

1

そのクラブには「仲間」がいるから。

2

自宅や職場の近くにあり通いやすいから。

3

スタッフやプログラムが自分に合っているから。

これが継続理由のベスト3である。
勿論、施設や設備、そして清掃の状況などベスト4以下には入ってくるが、このことは入会の動機を高めるためには非常に有効であるが、継続の動機(モチベーション)としてはベスト3には入っていないようである。

現場スタッフの具体的動き

会員が直ぐ退会するかどうかのポイントとして入会のさせ方が大きい。
入会金が高額であればあるほど退会する確率は下がる。
入会金の金額と継続率は正比例する。
ということは入会金0円キャンペーンで入会した会員は最も退会しやすい。

行動1
入会はスタッフのセールス力で獲る。
具体的手法として、チラシや口コミによって来館された見学者を「館内セールス」ガイドラインに乗っ取り見学者入会率を向上させる。このことは単に入会獲得行動と位置付けるのではなく、スタッフの会員を大切にする意識を育てる。自分が入れた会員は気になるのが人情、その人情そのものがサービスマインドである。
行動2

【オリエンテーション】

入会手続き時に初回利用日を決めていただき、確実にオリエンテーションを実施し、クラブでの楽しみ方やプログラムの受け方選択の基準、館内でのルールやマナーの説明をし、来館しても戸惑わない様にしてあげる支援が必要。入会したらほっといて欲しいと考える新規会員は多いが、ほっておくと結局は上手く利用できずにクラブでの居場所が確保出来ずに、利用が少なくなり辞めてしまう。
(つかず、はなれず)

行動3

【トレーナー担当制】

会員とクラブを結ぶのはスタッフである。気軽にしゃべれるスタッフがいることは継続のモチベーションには欠かせない。しかし多くの会員が、何か分からないことやクレームを抱えていても誰に言えば良いのかと思っている間にクラブへの足が遠のき辞めてしまう、特に多額の入会金を支払った場合は別として入会金免除(0円)で入ったような人は「まっいいか」となる。以外に会員は忙しく動くスタッフには声を掛けずらく感じている、またはその反対に暇そうにボケっとしているスタッフにも声は掛けない。
その意味で誰に言えば良いのか、その方法は電話でも良い事などを知らせる事は大切であり、自分のトレーニングプログラムの作成もしてくれる自分を知っていてくれるスタッフは必要である。
初回利用日にはその担当スタッフ(トレーナー)がオリエンテーションを行う、理想的には「館内セールス」の担当者がそのまま担当になるほうが良い。相手(会員)がそこまではと思っても最初は一歩踏み込んだ担当制は会員の自立を早める。

私はプールだけの利用だからトレーナーは要らないという人にも、プールの前にストレッチだけでもトレーニングジムに顔を出してもれえるように誘導する。何でもそうだが最初が肝心、入会後3ヶ月も経てば、利用状況がどうであれ、スタッフの言うことは聞かなくなる。その意味で初回利用日から3回目くらいまでは非常に重要である。

もう一つ重要なことは、会員から紹介入会促進の最も有効な時期がこの時期である。まだクラブに慣れていないその会員は会員としての後輩を望んでいる。クラブに知り合いがいないことは紹介のチャンスである。その時期を逃さず、紹介入会を勧める。その行為は継続を強化することにもなる。
ベテラン会員に紹介するなど、仲間づくりのコーディネーターも担当スタッフの重要な役割である。

行動4

【レッスンやアワー参加時のインストラクターの役割】

初めてレッスンに参加した時のインストラクターの丁寧かつフレンドリーな対応は一生の思い出に残ると言っても過言ではない。初めて何かにチャレンジする時は誰でも不安と緊張があるもの、その時に安心をあたえられればこんなに嬉しいことはない。

行動5

【1ヶ月0回利用者にはハガキかDM、電話によってフォローする】

1ヶ月間一度も利用しない状況は退会の兆候である。フォローの内容はただ「来てください」ではなく、イベントのお知らせや、クラブで近況報告によって「いつでもお待ちしておりますよ」の気持ちを伝えること、利用していなくても会員は会員、大切なのは「自分は会員なんだ」の意識が希薄にならないような配慮である。
会員数が多ければあまり利用率が高いと施設のキャパシテイーを心配して利用しない人をそのままにしておくの考えをするクラブもあるが、効率よく利用していただくためにも比較的空いている時間帯や曜日、レッスンなどの情報を会員に知らせることもスタッフの誠意である。

行動6

【退会カウンセリング】

退会手続きにフロントへ来られた時、必ずトレーナーと面談を行う。退会に来られる方は何もなく事務的に処理を済ませたいと考えているが、一方では、一度は入会したクラブ、あまりにも無機質に事務的に退会届を書いて、印鑑を押しておしまい、では少し寂しい。
遠慮されても、トレーナーをフロントに呼んで、所定のアンケート用紙に沿ってカウンセリングを行う。

その目的は退会を止めることより、その人がなぜ辞めようと決意したかを聞き出すこと、相手に話を多くさせること、何等かの不満を抱えているから辞めるのであって、それが何かをしゃべり出せば大きくうなずいて共感の気持ちで聞いてあげる。
内容はクレーム的なものもあるがしっかり聞いてあげる。スタッフとして気づかなかった何かを発見できるかもしれない。これは現会員にも充分可能性があるので、今後の対応に大きな参考となる。

10%~20%の人が話が出来、共感してもらえれば気持ちが変わり、退会を保留にしてくれる場合もある。この時に必ず次回利用日のアポイントをとり、「お待ちしておりました」と向かえる担当者を決めておく、そうでないと又同じ結果になる。

人は商品が悪いと感じたら10人に言う、商品が良いと感じたことは3人にしか言わない。放っておけば必ず悪い評判が先行する。
辞めていかれる方に少しでも良い印象で別れられるようにする行動でもあるのが、この「退会カウンセリング」である。そして10人の内の1人がスタッフであれば、後9人、この1人は大きい。

幹部スタッフとしてのリーダーシップの考え方

会員ビジネスとは入会数より退会数が下回れば、会員数は増えていくのである。
現場スタッフは日常の業務に追われ又は惑わされ、辞めていく人など気にとめていない場合が多い。しかしこれは会員は勝手に入会し勝手に退会していくものだと無意識に感じているからである。
そうではなくスタッフの人的働き掛けが何よりも重要であることを知ってほしいと経営サイドは考える。しかしそのことをいくら声を大にしても繰り返し言っても、立場が違うためなかなか共通理解がたやすくない。

最近「コーチング」という部下の能力開発の考え方がよく言われ出した。これは指示命令や「飴とムチ」で部下をコントロールするのではなく、部下その人自身が気付き、考え自立し個立(孤立とは違う)し自己実現欲求を育み支援していくという考え方である。
やらせる→やってもらう→やりたくなる
気付かせる環境整備と気付くチャンスの提供から始まると考える。
色々な経験が大切である。そんな視点でスタッフを育んでいければ、この業界の明日は明るい。

まとめ

業界の風潮として入会金0円キャンペーンを年がら年中行っている。簡単に入会するから、簡単に退会する。
その結果退会率が月平均5%以上にもなっている。3000名の会員数のクラブと仮定して5%は150名、この数字が1年(12ヶ月)続けば1800人。
この1800名を補うためにまた1800名の入会を獲るためにキャンペーンをせざるを得ない。

この悪循環は果たしていつまで続くのか。
入会金を数十万円も頂ける時代ではないと思うが適性と思われる入会金は頂き、その中でチャレンジできることから実施していく。そうしていくことがこの業界のサービスレベル向上に繋がると考える。

入会金が頂けないのなら、入会登録料として数千円でも頂ければ、
次の展開が見えてくるかもしれない。

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